ドイツ遠望

はるか彼方になったドイツのことを思いつくままに

ドイツの電力料金は高いか?

 

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ドイツ北部の風力パーク

高いグリーン電力の増加で電力料金が上昇

日本では「ドイツは電気代が高い」という人が多い。再生可能エネルギーによる電力(グリーン電力)を高い価格で買いとり、電力料金に上乗せするためだという。風力や太陽光による電力は高い価格で買い取られるので、発電設備がますます増え、今では国内で消費される電力の半分近くがグリーン電力である。グリーン電力の割合が増すに伴って電力料金も上昇を続けてきたのは事実である。

 ドイツの電力料金は日本よりも高い

では、ドイツの電気料金はどれくらい高いのだろうか。ドイツの電力・ガス・水道事業者の団体であるBDEWによると、2019年の場合、3人家族で年間の電力消費量が3,500キロワットアワーの標準的な世帯の場合、1キロワットアワーあたりの料金(単価)は30.43セントである。1ユーロを120円とすると、36.52円である。

これに対して、日本の電力料金は2018年10月から2019年9月までに実際に支払った具体例を基に計算すると1キロワットアワーあたり29.44円となった。ドイツの電力料金の方が確かに7円(24%)ほど高い。

ドイツの方が高いのは主に税金のせい

そこで、もう少し子細に比較すると次の表ようになり、いろいろなことが見えてくる。

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日本とドイツの電力料金比較

注)日本の料金はマンション一括受電の場合。実際の例であるが、消費量がたまたまドイツの標準世帯の場合に近かった。燃料費調整後、ペーパーレス割引差引後の料金、消費税は8%である。

 

 いくつかの点で違いがあるが、再エネ賦課金およびその他の賦課金はとりあえず措くとして、それ以外では消費税額の違いも大きく、電力税はドイツにはあるが日本にはない。日本の消費税率は上表のデータ時点で8%、ドイツは19%である。電力税は定額で、1キロワットアワーあたり2.05ユーロである。税金は国が徴収するものなので、これを除外した実質の電力料金を比較すると日本は1キロワットアワーあたり27.26円、ドイツは28.22円で、差は1円足らずに過ぎない。この程度であれば「ドイツの電力料金は高い!」というほどのこともないのではなかろうか?

ほかにもある重要な違い

「今はユーロが安いからそんな計算が成り立つのだ」と指摘される方もおられるであろう。ごもっともである。1ユーロ=120円ではなく、1ユーロ=130円になると、税金を除いた料金は日本の27.26円に対して、ドイツは30.58円となり、日本よりも12%以上高くなる。しかし、その時は、電力料金だけでなく、すべてのものが同じように高くなる。国民の賃金・給与も含めて・・・。

しかし、それよりももっと重要なのは税金だけでなく、付加金等も除いた電力料金であるが、これについては次の機会に採り上げる。